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つくられた心 [読書・映画・音楽]

つくられた心 (teens’best selection)

つくられた心 (teens’best selection)

  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2019/02/15
  • メディア: 単行本

新しくつくられた「モデル校」は、防犯カメラ、集音マイク完備のスーパーセキュリティシステムに加え、クラスにひとりイジメ防止の<見守り役>としてアンドロイド(ガードロイド)が1体、配置されるという。小学校6年生のミカはきれいで気持ちのよい校舎で新しい友だちもでき、新生活に胸を躍らせるが、やがてクラス内に「ガードロイド探し」が始まり…。ホンモノの心って? 人間の心とガードロイドの心の違いって?
──近未来の東京を舞台にした物語ですが、これは「明日の東京」の話かもしれません。AIと人間が共存する社会を読み応えたっぷりに描きます。(Amazon)



近未来の「理想の学校」を舞台とした、ミステリアスな物語です。

近未来・・・と書きましたが、ドライブレコーダーや監視カメラの普及など、この物語で語られる理想の学校、理想の社会は、「かなり」現実のものになっています。相互監視体制による欲望の抑止。そして、見えざる欲望の方向付け。私たちはすでに、この世界に足を踏み入れていると言ってよいでしょう。


200ページもない中編物語なので、1時間足らずで読み終えることができます。

語られているテーマが大きいので、消化不良に感じる部分もあります。

お互いをガードロイドと疑い合い友情の危機を迎えるも、「信じることが大切」の一言で解決してしまうところや、結局ガードロイドは誰だったのかが分からないまま結末を迎えるところとか・・・

しかし、中編で語り足りない部分が多い故に、読者が語りたくなる欲求を刺激する点で、非常に魅力的な1冊だと感じました。


 

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言語学バーリ・トゥード: [読書・映画・音楽]


言語学バーリ・トゥード: Round 1 AIは「絶対に押すなよ」を理解できるか

言語学バーリ・トゥード: Round 1 AIは「絶対に押すなよ」を理解できるか

  • 作者: 川添 愛
  • 出版社/メーカー: 東京大学出版会
  • 発売日: 2021/07/26
  • メディア: 単行本
「読むなよ、絶対に読むなよ! 」
ラッシャー木村の「こんばんは」に、なぜファンはズッコケたのか。ユーミンの名曲を、どうして「恋人はサンタクロース」と勘違いしてしまうのか。身近にある言語学の話題を、ユーモアあふれる巧みな文章で綴る。著者の新たな境地、抱腹絶倒必至! 東京大学出版会創立70周年記念出版。(帯より)



言語学の本・・・と言っても、全然堅苦しい本ではありません。

生活の中で、言葉に対してふと感じる素朴な問いに対する雑感を、プロレス成分多めに語っています。

私自身、プロレスに関しては門外漢なのですが、なんでしょうね、格闘技と競馬、プロ野球(サッカーも)で具体を語る人の文章には、非常に求心力がある気がします。


全編を通読して特に印象に残ったのが、「こんばんは事件」の謎に迫る、の話です。


他人とのコミュニケーションは、情報量の少ない言葉を交わすところから始まり、徐々に情報量の多い言葉に移行していく・・・その緩やかな変化が通常であり、唐突に情報量の多い言葉を浴びせかける行為は異常であるとする考えに、ハッとしました。情報量の観点からあいさつを考えたことがありませんでしたが、言われてみれば、なるほど、その通りです。この本を読み、思わず膝を打ちたくなるような気付きがたくさんありました。


気楽に楽しむこともできるし、この本から得た示唆をもとに考えを深めていくこともできる・・・そういう本です。


 


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サンドイッチクラブ [読書・映画・音楽]


サンドイッチクラブ

サンドイッチクラブ

  • 作者: 長江 優子
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2021/03/25
  • メディア: Kindle版



 


 


洋書風の表紙ですが、内容は日本の児童文学そのもの。「タマゴ」こと桃沢珠子と、「ハム」こと羽村ヒカルの凸凹コンビの友情物語です。 



タマゴとハムでサンドイッチクラブ・・・他の登場人物たちも、サンドイッチの具材から命名されています。「葉真(ようま)」はレタス、「ちず」はチーズ、「杏」は…なんでしょう? 一読したとき、「ハイスクール奇面組!」を思い出してしまった・・・という感想が、今の小学生には通じないのが寂しいですね(笑)。



さて、頭もよくない、大きな夢もない。でも、満たされた生活を送っているタマゴが、塾の特待生をとるほど頭がよく、少し変わっているハムと出会うことから、この物語は始まります。


満たされなさの充足を願う物語。そうした題材はすでにありふれたものになっています。ある者は自由を求めて海へ出たり、またある者は別の自分になるためにメトロポリタン美術館に家出をしたり・・・こうした児童文学の例は、枚挙に暇がありません。



この物語に深みを与えているのは、戦争の描写です。平和な日常の中に、戦争の影がちらちらと入り込むのです。ハムの戦争恐怖症は極端ですが、周囲の人達の無防備な安心感と対比したとき、その不安は決して極端なものではないように感じました。


なぜ私たちは、戦争の影におびえず、安心して生きてしまっているのでしょう。何かがマヒしてしまっているからでしょうか。おかしいのは、過剰に戦争を恐れるハムではなくて、むしろ私たちの方なのでは? ・・・そんな思いに駆られます。



後半、タマゴが物分かりがよすぎて、ご都合主義的な展開なのが気になりますが、読後感は悪くありません。悪くないどころか、「とてもいい」です。特に、砂像づくりという馴染みのない題材で、二人のつながりを描くのはとてもいいなと思いました。


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雷獣ヴァヴェリ [読書・映画・音楽]


さあ、気ちがいになりなさい (ハヤカワ文庫SF)

さあ、気ちがいになりなさい (ハヤカワ文庫SF)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2017/04/30
  • メディア: Kindle版


フレデリック・ブラウン短編集「さあ、気ちがいになりなさい」より「雷獣ヴァヴェリ」。 


ある日突然、生活の中から電気が失われる。


物語はそこから始まります。世の中は、当然大混乱に陥るのですが、その後の人間の適応力の速さ! 現実でもきっとそう、人間は思っている以上に強かです。とはいえ、この物語の結末は、ずいぶんと牧歌的ともいえるでしょう。実際に、もしもこの世の中から電気が失われたら、馬力や蒸気の時代に戻るとは思えません。


 「春のかおりが湿った空気の中で、やわらかく 甘く 漂っていた。


 平和と黄昏。  


  遠い雷鳴。


〈残念だな〉と彼は思った、


〈すこしでもいいから稲妻が光ってくれたらなあ〉  


 彼は稲妻だけが恋しかった。」


 平穏の中にあっても、人間は稲妻(=文明的なもの)を求める生き物です。


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針供養 [ことば]

家庭科の授業中のことです。

裁縫をしている際に、ある子が針を折ってしまいました。

「危険だから、先生のほうで処理をしておきますね」と話したところ、サポートに入ってくださっていた先生が、

「針供養ね」とおっしゃったのです。


針供養。

久しく聞いていなかった、美しい日本語です。

思わず子ども達の手を止めさせ、針供養の意味を語ってしまいました。

授業の流れを無視した行為は、決して褒められたものではないですが、語った私は、今日一日、あかるい気持ちで過ごすことができました。


美しいことばに触れる喜び。

教師として、子ども達に伝えていきたいことの一つです。

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『虹いろ図書館』シリーズ [読書・映画・音楽]


虹いろ図書館のへびおとこ (5分シリーズ+)

虹いろ図書館のへびおとこ (5分シリーズ+)

  • 作者: 櫻井とりお
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2019/11/19
  • メディア: 単行本


◆題名+表紙情報から、内容の予想を試みてみました。

・なぜ「にじいろ」?

・「へびおとこ」って何者?

・いじめにより不登校になった少女が主人公?

・表紙の女の子が主人公?

・この子がにじいろ図書館で「へびおとこ」と出会うことで、不登校を克服してハッピーエンドを迎える?

・・・5分間ほどで思いついたのはそのくらいでした。

◆読後に読み返してみると、情報量が増えているので、同じものを見ても、見えるものが違います。題名+表紙からの予想読み→読後の読み返しは、読書体験による世界の変化が実感できる、おすすめの読書法です。

・「へびおとこ」と言えば見世物小屋。見世物として好奇の目で見られる存在の暗喩。題名読みの時点で気づきませんでした。

・表紙絵をよく見ると、物語のキーアイテムがそこかしこに! 「ウォーリー」シリーズのように、じっくりと見入ってしまいます。

◆「へびおとこ」ことイヌガミさんのあだなの付け方が秀逸です。

読書好きならぐっとくる、「ショーネンヒッコー君」や『ドリトル先生シリーズ』をもじった「スタビンズ君」というあだ名がすごくいいですね。今、朝日新聞で連載中、福岡伸一さんの「ドリトル先生ガラパゴスを救う」を読んでいるところだったので、「スタビンズ君」という名前が出てきただけで思わずニヤついてしまいました。

そういう、読書好きをくすぐる仕掛けがたくさんある本です。続編の『虹いろ図書館のひなとゆん』もいい本ですが、私は断然へびおとこが好きです。

虹いろ図書館のひなとゆん (5分シリーズ+)

虹いろ図書館のひなとゆん (5分シリーズ+)

  • 作者: 櫻井とりお
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2020/10/21
  • メディア: 単行本



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給食アンサンブル [読書・映画・音楽]


短編集「給食アンサンブル」の一篇、「七夕ゼリー」より。
  • 家庭の事情で転校した美貴。

    心は前の環境に置き去りのまま、新しい中学校で「ここは私の場所ではない」という思いを抱えて過ごしています。前の中学校はよかったのに。それに比べて、今の中学校は・・・

  • 不満の最たるものが給食の時間です。安っぽい献立も、騒々しい食事環境も、何もかもが気に入りません。給食を口にしようとしない行為に、新しい世界を取り込もうとしない美貴の心情が象徴的に表れています。

    前半部分の美貴の心情は、クラスがえがあって、新しいクラスになじめない子たちには、とても共感できると思います。

  • そんな美貴が変わることができたのは、周囲の優しさがあったからです。それは間違いありません。でも、いかに恵まれた環境にあっても、変われない人は変われないのです。美貴は、自分の寂しさに気付いていたから、周囲の優しさを変わるためのきっかけとして受け止められました。

  • 「素直になれば、世界は変わる。」簡単なことのようだけど、とても難しいことですね。現実には、なじめないまま鬱屈とした日々を送っている中高生も多いことでしょう。私自身もそうでしたし。

  • 給食を美味しく口にすることができた美貴の変化を、大人になった私は「希望」と感じましたが、若い世代の人たちは、どんな読後感をもつのでしょう。意見交換をしてみたいなぁと思いました。


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始まった [2020ことばの魔法]

一斉登校が始まり、3週が過ぎました。授業中心の日々でしたが、学級活動の時間で


委員会の編成とクラス目標の作成


を行いました。

学級活動をていねいに行うと授業時間が足りなくなってしまう…という思いはありました(大人の都合ですね)が、ここに時間を割けないようでは学校の存在意義はありません。話し合いをある程度のところで収束させてしまいたくなる思いをぐっとこらえ、けっこうな時間を費やしました。

やってみて思ったこと。やはり話し合い活動に時間を割くことは大切ですね。一部の思いだけではなく多数の思い、異なる意見の受容と調整等のやりとりを通し、子どもたちは学校やクラスへの所属意識を高めていました。


話合いの中で、クラスの抱える課題も見えます。「始まったのだな・・・」という実感がやっとわいてきていました。

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反省 [2020ことばの魔法]

同じ学年を何度も担任していますと、指導の勘所が分かってきます。ここはつまずきやすいポイントだから事前に指導を入れよう、くり返し取り組んで定着を目指そう…というように、勘所を押さえた授業を心掛けるようになります。この「分かっている」というのが曲者で、たいていの場合、「分かっている」ではなく、「分かっているつもり」だったりするわけです。

今日も社会のテストで「平城京」と「平安京」の間違いが続出しました。授業中にあれだけくり返してきたのに…と、子どもに責任を転嫁するのは浅はかですね。子どもの中にそれが落ちていなければ、指導ができたとは言えません。機械的に反復するのではなく、頭を使ったくり返しを促していく。頭を使いたくなる工夫が教師には必要なのです。それが足りませんでした。反省。

テストの点数は、子どもたちのみならず、担任にとっても指導を見直す契機となります。

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板書 [2020ことばの魔法]

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口頭による情報伝達を減らさなければならないため、どうしても板書の量が多くなります。数年ぶりにきちんと板書計画を立てて授業に臨んでいますが…板書の難しさを改めて感じています。教師の基本的技能を疎かにしてきた証左です。

「ああ、授業がもっと上手になりたい。」

今年度はそんなもの思いに駆られることが多いです。

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