サンドイッチクラブ [読書・映画・音楽]


サンドイッチクラブ

サンドイッチクラブ

  • 作者: 長江 優子
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2021/03/25
  • メディア: Kindle版



 


 


洋書風の表紙ですが、内容は日本の児童文学そのもの。「タマゴ」こと桃沢珠子と、「ハム」こと羽村ヒカルの凸凹コンビの友情物語です。 



タマゴとハムでサンドイッチクラブ・・・他の登場人物たちも、サンドイッチの具材から命名されています。「葉真(ようま)」はレタス、「ちず」はチーズ、「杏」は…なんでしょう? 一読したとき、「ハイスクール奇面組!」を思い出してしまった・・・という感想が、今の小学生には通じないのが寂しいですね(笑)。



さて、頭もよくない、大きな夢もない。でも、満たされた生活を送っているタマゴが、塾の特待生をとるほど頭がよく、少し変わっているハムと出会うことから、この物語は始まります。


満たされなさの充足を願う物語。そうした題材はすでにありふれたものになっています。ある者は自由を求めて海へ出たり、またある者は別の自分になるためにメトロポリタン美術館に家出をしたり・・・こうした児童文学の例は、枚挙に暇がありません。



この物語に深みを与えているのは、戦争の描写です。平和な日常の中に、戦争の影がちらちらと入り込むのです。ハムの戦争恐怖症は極端ですが、周囲の人達の無防備な安心感と対比したとき、その不安は決して極端なものではないように感じました。


なぜ私たちは、戦争の影におびえず、安心して生きてしまっているのでしょう。何かがマヒしてしまっているからでしょうか。おかしいのは、過剰に戦争を恐れるハムではなくて、むしろ私たちの方なのでは? ・・・そんな思いに駆られます。



後半、タマゴが物分かりがよすぎて、ご都合主義的な展開なのが気になりますが、読後感は悪くありません。悪くないどころか、「とてもいい」です。特に、砂像づくりという馴染みのない題材で、二人のつながりを描くのはとてもいいなと思いました。


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