雷獣ヴァヴェリ [読書・映画・音楽]


さあ、気ちがいになりなさい (ハヤカワ文庫SF)

さあ、気ちがいになりなさい (ハヤカワ文庫SF)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2017/04/30
  • メディア: Kindle版


フレデリック・ブラウン短編集「さあ、気ちがいになりなさい」より「雷獣ヴァヴェリ」。 


ある日突然、生活の中から電気が失われる。


物語はそこから始まります。世の中は、当然大混乱に陥るのですが、その後の人間の適応力の速さ! 現実でもきっとそう、人間は思っている以上に強かです。とはいえ、この物語の結末は、ずいぶんと牧歌的ともいえるでしょう。実際に、もしもこの世の中から電気が失われたら、馬力や蒸気の時代に戻るとは思えません。


 「春のかおりが湿った空気の中で、やわらかく 甘く 漂っていた。


 平和と黄昏。  


  遠い雷鳴。


〈残念だな〉と彼は思った、


〈すこしでもいいから稲妻が光ってくれたらなあ〉  


 彼は稲妻だけが恋しかった。」


 平穏の中にあっても、人間は稲妻(=文明的なもの)を求める生き物です。


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